経済ネタ 第2号 プライマリーバランスを黒字化すると私たちは貧乏になる?(その2) デフレ(デフレーション)とGDP(国内総生産)について
前回、プライマリーバランス黒字化を、目標にしてしまうと、私たちは貧乏になる、というお話しをした。プライマリーバランス黒字化するということは、何かの予算が必要になったときに、今ある予算の範囲で、他を削って予算を持ってくるか、増税で賄うかして、国債の増発に頼ってはいけない、というものだった。
さて、安倍政権が行う、アベノミクスという政策を聞いたことがあるだろう。「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」という、「3本の矢」で、長期のデフレを脱却し、名目経済成長率(GDP)3%を目指すというものだ。これは正しい政策なのだが、一向にデフレからの脱却ができないでいる。何故なんだろうか?
詳しくアベノミクスを説明する前に、今回のコラムではデフレとGDPについて説明してみよう。まずはデフレから。
デフレとは、デフレーションの略で、物の値段が下がり、お金の価値が上がることで、さらに、その状態が継続することである。総需要<総供給ということである。今はデフレが1997年(消費税3%から5%に上げた時)以降ずっと続いているのが今の日本の現状だ。
デフレは物の値段が下がるから、良いじゃないか?と見る向きもあるだろうが、ここでよく考えてほしい。自分が俳優だったとしよう。映画に出たらギャラを貰うが、そのギャラが下がることを意味するのだ。値段が下がるというのは、自分の演技への対価(評価)が下がるという事だ。
言い方を変えれば、デフレの時には、我々はドンドンと貧乏になっていく、という事なのだ。モノの値段が下がるというのは、私たちが生産するものの価値が下がるという事で、それを買うための支出も、それに伴い下がるが、その結果として、私たちの収入も下がってしまう。すなわち、GDPが下がるのだ。
GDPって何の略語かというと、Gross(総計) Domestic(国内の) Product(生産)の略称で、日本語だと、国内総生産と訳される。GDPの意味は、国内で新たに生産されたサービスや商品の付加価値の総額の事で、GDPを一言で表すと、「日本で、日本人が働いて稼いだ儲けのトータル」のことだ。
だから、GDPの伸び率が経済成長率に値するので、日本のGDPが増えると私たちは豊かになり、逆にGDPが減ると私たちは貧乏になる。ここで知っておいて欲しいのは、GDPは生産、支出、収入のそれぞれの合計は必ず等しくなる。これをGDP三面等価の原則という。
ということは、生産性を上げて、GDPを増やすと、それを買う支出がふえるので、結果として、収入が増えることになるのだ。逆にGDPを減らしてしまうと、生産量が下がり、それに伴い、買うための支出が減る。結果、私たちの収入が減ってしまう。貧乏になるという事だ。
GDPを増やすためには、投資が必要だが、デフレの状況下では、企業も、個人も将来に投資をしようと思わない。何故なら、個人なら、将来もっと安くなると判断するし、企業なら、今、投資しても儲からないと判断するからだ。だから、こんなデフレ時代に投資ができるのは政府だけなのだ。
しかし、政府は公共投資を、毎年10%以上も減らしてきている。GDPを増やすためには、財政出動(政府がお金を使う)をして、投資すべきであるに関わらず、である。デフレの今こそ、建設国債をドンドンと発行して、政府がインフラ設備(新幹線、高速道路、港の整備拡大化、耐震構造の強化、老朽化インフラの整備等)や将来の科学技術への投資等をどんどん進めるべきである。
前回も述べたが、日本政府が建設国債を増発して、財政赤字が増えたとしても、心配はいらない。他国通貨建ての債務超過で、財政破たんした国はいくつもあるが、自国通貨(我が国の場合は日本円)建ての借金は、通貨発行権がある政府には元々存在しない。日本銀行が政府の借金を買い取ることができるからだ。そもそも、政府の負債問題は初めから存在しないのだ。自国通貨建てで、債務がいくら膨らむとしても、財政破たんした国家は、有史以来、存在しない。
何故そんな分かりきったことができないのか?それは全て、プライマリーバランスを黒字化する、という目標を立ててしまっているからだ。この目標を立てた場合、建設国債を発行できないので、増税するしかない。
増税すると、需要が減るので、当然デフレが進んでしまう。よって、GDPは増えなくなる。その証拠に、2014年に消費税を5%から8%に増税したが、その結果、少し回復しかけた経済状況は悪化し、デフレはより深刻になった。
このような悪循環を今の日本政府は行っているのだ。プライマリーバランスを黒字化する目標をやめ、政府が建設国債を発行し、公共投資を先ずは増やして、GDPを増やせばいいだけなのだ。
これに気付いて政府が行うことができれば、政府の支持率は上がるのではないだろうか。これを政策に入れれば、その党の支持率はきっと上がるだろう。しかし、マスコミからは非難されることになるだろう。今の日本は正しい事を言っても、それが正しい事としてマスコミでは取り上げられない。いわゆるフェイクニュースの増産に走ってしまっている。困った状況である。
次回のコラムでは、このままGDPが増やせず、デフレを脱却できなければ、日本がどんな状況になってしまうか?どんな恐ろしい状況になってしまうのか?等、お知らせしたいと思う。